民主主義のエネルギーは大自然の力に似ています。いつもはもの静かで、しかし時々すべてをリセットするようにふるまう。それを大きなサイクルで繰り返しながら、長期で全体としてのバランスを保っている。民主主義にも、そうした「靜」と「動」の両方の性格を感じます。
私たちは、民主主義というものを、ともすれば、ただの「優等生で目立たないおとなしいヤツ」と考えがちです。しかし、民主主義には、「いざ怒るとすごい火山のようなヤツ」という部分もあることを十分に理解しなければなりません。
民主主義は、ただの理想ではない、とても奥の深いものだということを、今回のアメリカ大統領選挙でしみじみと感じました。
ちなみに、前回ふれたフランス革命も、物価高で生活に苦しむ民衆や、給料の支払いが遅れていた兵士などが、政治家が犯罪者として入れられていたバスティーユの刑務所を襲撃したことがきっかけでした。その意味で、民衆の切実な苦しみが大きなエネルギーになった革命です。
もちろん、今回の大統領選挙の結果は、国家をひっくり返すという意味での革命ではありません。ただ、民衆の切実な苦しみが大きなエネルギーになったという意味で、それは「静かな革命」・「平和的な革命」と言えます。それは、民主主義の崩壊や否定や誤りではありません。それは民主主義そのものが持つ真の姿のあらわれです。 ともすればその「革命」が混乱や挫折をもたらすことがあってもです。民主主義は「きれいごと」ではないということです。
以上の視点で、トランプ政権を理解しながら今後を見ていきたいと思います。長期で全体的なバランスを保ちながら、「静」と「動」のサイクルを四方八方に龍のうねりのように繰り返す民主主義。その「動」の真っただ中にあるアメリカ。それは、日本を含む国際社会、ひいては私たちの日常生活にも大変大きな影響を与えます。