私は、トランプ氏への好き嫌いを別にして、「自分たちの命や生活を守る」という、多くの民衆の切実な思い・エネルギーが、ひとつのうねりになって、トランプ氏の「圧勝」につながったと思います。
「民主主義」とは、文字通り一般民衆・国民全体が主人公になって、政治の大きなかじ取りをする仕組みを言います。ただ、その根底には民衆のエネルギーがあります。つまり、「民主主義」はただの教科書的な「政治の仕組み」ではありません。「民衆のエネルギー」と1セットのものです。
その民衆のエネルギーは、マグマのようなものです。いつもはおとなしくしていますが、自分たちの命・名誉、そして何より日常生活が大きくおびやかされると、活発になり、ひとつのうねりになって、火山のように爆発します。その爆発の仕方は、「革命」のような形をとることもあれば、今回のアメリカ大統領選挙のような形をとることもあります。
このように、民主主義をただの「政治の仕組み」ではなく「民衆のエネルギー」でもあるととらえると、民衆のエネルギーのうねりや爆発は、民主主義につきものの、もっと言えば民主主義そのもののあらわれと言えます。そして、そのエネルギーのうねりや爆発には、「自分たちの命・名誉・生活を守りたい」という一般民衆の切実な苦しみ・思いがあります。
ですから、ナポレオンも、ヒトラーも、そしてトランプ氏も、民主主義が崩壊したり、否定されたり、誤った方向に行ったために登場したのではありません。もともと、民主主義がもつ民衆のエネルギーには、それらの人々を生み出す性質がそなわっています。