前回述べたとおり、「労働契約」では、使用者に、「労働者の生活と人生に影響を与える」権限が認められます。使用者は、それに応じた責任を負います。労働者の生活と人生を、それなりにあずかることへの責任です。
この場合に一番ポイントになるのは、使用者=会社の査定権と人事権です。仕事への指揮命令そのものではありません。言い換えると、心身の安全への配慮とともに、会社が査定や人事を公平・平等に行うこと(均衡と均等)が求められます。これは、会社の一方的な権限ではありません。労働契約に付いてくる副産物のような脇役の責任でもありません。それは、労働(あるいは労働契約)の本質に深く関わる、とても重要なことです。
ですから、法律が定める、「使用」・「従事」といった言葉を掘り下げるとすれば、「指揮命令」・「支配従属」ではありません。「労働者の生活と人生への影響」がキーワードになります。この影響について、使用者が権限を使い、責任を果たす。それらを適切で合理的なものにする。そのための規制やあと押しを法律や行政指導などで行うことになります。
「労働法」と呼ばれる法律や行政基準などのかたまりは、簡単に言うと、そのためにあります。